文化労働と労働文化
――その緊張関係を問う――
「文化」を生み出したり,表象したりする人間の営みを「労働」との関係で捉え,文化と労働の結びつきが,現代社会においていかに表出しているのか,「文化に関わる労働」と「労働が醸成する(しない)文化」という二つの観点から議論する。
前者について言えば,芸術家や文化産業従事者の活動には,自由な創作だけではない労働としての側面が大きいが,アニメ産業に見て取れるように,働く者自らの嗜好や保持する専門知識や技能に結びついているゆえに労働の搾取を受け入れる傾向がある。後者について言えば,石見銀山や軍艦島を想起すればよくわかるように,かつての過酷な労働空間が文化として見直される一方で,非正規雇用や派遣労働が増え,かつてのような労働文化形成の基盤が揺らいでいるという問題がある。
本セッションでは,報告者,討論者,フロアとの垣根をなるべく取り払って,自由な相互討論を行い,「文化と労働」にかかわる新たな知見,より深い洞察を創造したいと考える。
報告者
雪村まゆみ(関西学院大学)
木村至聖(甲南女子大学)
益田仁(長崎国際大学)
吉澤弥生(大阪大学)
討論者
前田拓也(神戸学院大学)
渡邊太(大阪国際大学)
小川さやか(立命館大学)
(研究活動委員 早川洋行)